8/29米国株式市場は続落。国債金利上昇の警戒感。

経済ニュース相場分析

50才から始める米国株式投資初心者の資産運用

8/29(月)の株価

前日比(%)
日経平均27,878.96円-2.66
ダウ平均32,098.99ドル-0.57
S&P5004,030.61ドル-0.67
ナスダック12,017.67ドル-1.02
ラッセル20001,882.94ドル-0.89
米10年国債3.114+2.33
恐怖指数(VIX)26.21+0.65

29日の米国株式市場は3指数共に続落。国債金利上昇の警戒感。

29日の米国株式市場は、3指数共に続落する。

先週のパウエルFRB議長のジャクソンホールでの講演を受けて、株式市場は幅広く売りが広がった。きょうもその流れが続いている。下値では値ごろ感からの押し目買いも見られ、ダウ平均は一時プラス圏に浮上する場面も見られた。上値では戻り待ちの売りも多く、結局、続落して終えている。

パウエル議長の講演はタカ派ではあったが、想定範囲内の印象も強い。ただ、株式市場はこれまで過度に楽観的になっていたこともあって敏感に反応したようだ。議長は大幅利上げが正当化される可能性があると述べ、インフレが和らぐまで政策金利が高止まりする可能性を示唆した。

株式市場では7月のインフレ指標がピーク接近の兆候を見せたことや、リセッション(景気後退)への警戒感から、FRBは来年に利下げに転じると期待している。しかし、議長の講演をきっかけに、その見方が揺らぎ始め、6月からのリバウンド相場が本格的な回復に繋がるとの楽観的な見方を一歩後退させている模様。市場では今回のサマーラリーを下げ相場の一時的な反転との見方も多く出ていたが、改めてその見方を意識している面もあるようだ。

今年上半期の株安のほぼすべてがFRBの引き締めに起因しているが、下半期は最終的に来年の業績予想で決まるとの見方も出ている。インフレがさらに利益や需要を圧迫することが予想され、今後はFRBではなく、これらのリスクに焦点を当てるべきだという。

原油相場に買いが膨らみ、エネルギー株が上昇した一方、銀行やIT・ハイテク株が軟調に推移。医薬品も下落した。

ウォール街のストラテジスト、金利上昇が米企業に与える影響懸念

  • インフレで「より長期間、より高い」政策金利が必要に-BofA
  • 業績には著しい下振れ余地がある-モルガンSのウィルソン氏

ウォール街の大手金融機関の一部は、長期にわたるより高水準の金利が米企業の収益力を一段と圧迫するとみており、資金調達コスト上昇とインフレに企業が対応を強いられる中、株価上昇が脅かされると懸念している。

直近の決算発表シーズンで企業業績は懸念されていたほど悪くなかったが、モルガン・スタンレーとバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストは、株価が底を打つ前に利益予想をさらに引き下げる必要があると警告している。

BofAのストラテジストは、米金融当局が9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で0.5ポイントの利上げを行うと予想。9月2日に発表される8月雇用統計が強い内容となれば、0.75ポイント利上げに向けた環境が整う可能性さえあるとしている。

同行ストラテジストは顧客向けリポートで「金融当局が2つの責務を達成するのに必要な要件は、新型コロナ禍前に『より長期間、より低い』政策金利だったとすれば、現在は『より長期間、より高い』政策金利だというメッセージがジャクソンホール会合で発信されると予想していた。その予想は当たった」と指摘した。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は26日、カンザスシティー連銀が主催するワイオミング州ジャクソンホールでの年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で講演。「物価の安定を回復するには、景気抑制的な政策スタンスを一定期間維持することが必要となる可能性が高い」と述べた。

マイケル・ウィルソン氏率いるモルガン・スタンレーのストラテジストは29日付のリポートで、株式相場が26日に急落したことについて、「過去数カ月にわたる自らのモメンタムの犠牲になった」と分析。バリュエーションは下がったが適正価格をなお上回っていると付け加えた。

「ここから先、株式の軌道を決定するのは企業業績であり、業績には著しい下振れ余地があると当社ではなおみている」と分析。「従って株式投資家は米金融当局ではなく、このリスクに鋭意集中するべきだ」と続けた。

モルガン・スタンレーのストラテジストらは利益マージンへの圧力や業績の伸びへのリスクを示唆する2つの指標に注目している。将来の売上高の伸びと生産者物価指数の変化率の差、および名目国内総生産(GDP)の伸びと賃金の伸びの差だ。業績の先行モデルも1株当たり利益の伸びが今後数カ月にわたって急減すると予測しているとして、こうした見解を裏付けているとストラテジストらは説明した。

ウィルソン氏は景気や金融引き締め、企業利益の見通しがもたらすリスクを理由に、最近の株高は一時的なものにすぎないと一貫して警告してきた。パウエル議長が26日にインフレを根絶するために利上げを継続し、金利を高い水準でしばらく維持する可能性が高いことを示唆したことで、モルガン・スタンレーの確信が強まる格好となった。

FRBの量的引き締め加速、市場の流動性とリスク資産に脅威-チア氏

  • バランスシート縮小、来月から月間最大950億ドルに倍増
  • 経済はすでに悪い方向に角を曲がった-アカデミーのチア氏

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月からバランスシートの削減ペースを加速する。この量的引き締め(QT)の影響が過去2年の量的緩和(QE)と同程度であれば、リスク資産には未知の事態が待ち構えていることになるとアカデミー・セキュリティーズのマクロ戦略責任者、ピーター・チア氏は指摘した。

「非常に話しにくいことだが、昨年夏にFRBはQEを主張する根拠として市場の流動性に繰り返し言及していた」とチア氏はブルームバーグテレビジョンで指摘。「間違いなく言えるのは、市場の流動性、特に米国債市場の流動性は昨年夏よりはるかに悪化しているということだ」と語った。

FRBのバランスシート縮小が加速することに投資家はようやく気付き始めているとチア氏。量的引き締めと呼ばれるバランスシート縮小は、9月から月間最大950億ドル(約13兆2000億円)にペースが加速。すでにリセッション(景気後退)に入っている可能性のある経済に、下押し圧力が加わると同氏は指摘した。

「経済はすでに悪い方向に角を曲がったと考えられる」と述べ、「状況は変わりつつある。12月までにインフレではなく、デフレや経済における真の問題へと焦点が移っているだろう」と話した。

チア氏はパウエルFRB議長の講演について、経済に悪影響が及んでも利上げを継続することを意味するが、「度を超えた」需要押し下げを目指しているのではなく、手を緩める可能性さえあると話す。

「QTの作用は利上げとは大違いだと思う」とチア氏。「QEはあらゆる資産価格の膨張に大いに貢献した。これについてはいつも、ニュートンの揺り籠に例えて説明している。片端の球を一つ落とせば、残りの球すべてに衝撃が伝わり、その結果反対側の端の球が跳ね上がる。従ってQEの作用がニュートンの揺り籠のように資産価格、特に最もリスクの高い資産に及んだのだとすれば、QTではその反対のことが起きるだろう」と解説した。

FRBのバランスシート縮小が株価に与え得る影響は、然るべき注目を集めていない可能性があるとチア氏は言う。「これまでの動きが大き過ぎ、急速過ぎた」と述べ、暗号資産(仮想通貨)や高リスク銘柄、住宅には好ましくない動向が見られるとし、「投資家の無頓着さにも程がある」と語った。

コメント