4/10米国株式市場はまちまち、週内のインフレ指標や銀行決算待ち

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4/10(月)の株価

前日比(%)
日経平均27,633.66円+0.42
ダウ平均33,586.52ドル+0.30
S&P5004,109.11ドル+0.10
ナスダック12,084.36ドル-0.03
ラッセル20001,772.44ドル+1.02
米10年国債3.419+1.13
恐怖指数(VIX)18.97+0.57

10日の米国株式市場は、まちまち、週内のインフレ指標や銀行決算待ち

10日の米国株式市場は、ダウ平均とS&P500指数はプラス圏内。ナスダック総合指数はマイナス圏内となる。

市場は、先週金曜日の米雇用統計後のFRBの金融政策の行方を見極めたい雰囲気が強い。米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)は23.6万人増と、前回からの伸びは鈍化したものの、伝統的な基準である20万人増は上回っており、失業率は3.5%に低下した。一方、平均時給は2021年6月以来の低い伸びとなり、軟化の兆しは見られたものの、他の経済指標と比較すれば、雇用は底堅さを維持している印象。雇用指標は他の指標に比べて遅効性が強い面もあるのかもしれない。

市場は米雇用統計を受けて、5月FOMCでの利上げ期待を高めている。短期金融市場では70%程度の確率で0.25%の利上げを見込んでいる。先週までは、利上げはすでに打ち止めとの観測も出ていたが、米地区連銀総裁などFOMC委員からは、もう少し利上げが必要との言及が繰り返されていた。今回の米雇用統計は、FOMC委員の主張通りに、あと1回の利上げが正当化される内容ではある。

今週は12日に3月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。この内容を確認して、5月FOMCを最終判断することになりそうだ。もっとも、予想よりも弱い数字であれば、見方に変化が出る可能性もありそうだ。しかし、利上げ停止というよりも、6月に先送りされる可能性のほうを見たほうが良いのかもしれない。

市場からも、あと1回の利上げを見込む声が多く聞かれる。「今回の米雇用統計は、緩やかな景気後退というシナリオと一致しており、インフレ懸念が直ちに解消されるとは言い切れない。FRBの一時停止を正当化する材料が見当たらないため、5月に0.25%ポイントの追加利上げの確率が高くなるはずだ」という。

米CPIのほかに、今週は週末の大手銀を皮切りに、いよいよ1-3月期の決算シーズンが始まる。今回の決算はネガティブな内容になるのではとの見方も多く聞かれ、特にIT・ハイテク株については、今年に入ってからの株価上昇を正当化しないとの声も出ている。

 「株式市場は、利上げサイクル終了と、年後半から来年にかけての利下げ期待から上昇している。その分、今回の決算は失望する可能性がある。ただ、投資家の株式に対するポジショニングは非常に慎重で、経済指標は弱くなっているものの、厳しい景気後退を示唆するものではない」といった指摘も出ていた。

米大手銀の決算については、全体的に増益が見込まれている。通期のガイダンスも注目だが、今回は預金量や流動性についてどうコメントするかが注目との指摘も出ている。銀行問題で大手行には地銀の預金が流れ込んだが、その預金のマネー・マーケット・ファンド(MMF)への流出も増えている状況。

また、このところ警戒感が高まっている銀行セクターの商業用不動産へのエクスポージャーにも注目する声も多い。アナリストからは、米商業用不動産の価格が今後、40%下落する可能性があるとのレポートも出ていた。

5月の0.25ポイント米利上げ確率、80%超に上昇-金利スワップ示唆

金利スワップ市場は、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合での0.25ポイント追加利上げを80%余りの確率で織り込んだ。7日に発表された3月の米雇用統計が市場予想を上回ったことが材料。

FOMCは3月22日の前回会合でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.75-5%に引き上げた。しかしその後、複数の地銀破綻で銀行株が急落したことなどもあり、5月利上げの見込みはほぼゼロになった時期もあった。

YCCとマイナス金利は継続適当、現状維持の姿勢示す-植田総裁

  • 変動幅拡大などの措置の効果や市場動向を見極める必要-YCC
  • YCCの変更に踏み込む期待肩透かしとの声、市場では円安進む

日本銀行の植田和男新総裁は10日夜、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策とマイナス金利政策について、いずれも継続が適当との見解を示した。氷見野良三、内田真一の両副総裁とともに就任記者会見を行った。

植田氏は「現状の経済・物価・金融情勢を鑑みると、現行のYCCを継続するということが適当」と述べた。昨年12月の長期金利の許容変動幅拡大など「これまでの措置の効果や市場の動向については、今後も見極めていく必要がある」と指摘。その上で、YCCは「現状では経済にとって最も適切と考えられるイールドカーブの形成を実現するための仕組みだ」とした。

YCC政策の副作用の存在も改めて指摘するとともに、YCCを修正するかどうかは、経済・物価・金融の基調的な動きを踏まえて決めるのが正しいと指摘。持続的・安定的な物価2%の実現が難しい状況であれば、「副作用に配慮しつつ、より持続的な金融緩和の枠組みが何かということを探っていく」と語った。

マイナス金利政策に関しては「現在の強力な金融緩和のベースになっている政策」とし、副作用である金融機関収益へのマイナスの影響も小さくするような工夫がなされているとも説明。「現在の基調的なインフレ率がまだ2%に達していないという判断の下では、継続するのが適当である」との考えを示した。 

戦後初の学者出身の植田総裁は、在任期間が歴代最長の10年余りに及んだ黒田東彦氏の後任として9日に就任した。米欧発の海外経済減速や金融不安への懸念が広がる視界不良の中、黒田氏が果たせなかった賃金上昇を伴う持続的・安定的な2%の物価安定目標の実現を担う。大規模かつ複雑化し、さまざまな副作用が生じている金融緩和策の混乱なき修正も課題となる。

  植田総裁がYCCやマイナス金利政策の現状維持が適当との認識を示したことを受け、外国為替市場のドル・円相場は1ドル=133円台までドル高・円安が進んだ。

三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは、YCC政策の変更についてもう少し踏み込むという期待が肩透かしに終わったためではないかとみる。その上で、マイナス金利の継続も含め基本的には現状維持の姿勢だったと述べた。

植田氏は、これまでの長期にわたる金融緩和政策については、「全体を総合的に評価して、今後どういうふうに歩むべきかというような観点からの点検や検証があってもいい」と述べ、政策委員と議論して決めていきたいとの考えを示した。

 一方で、足元の物価動向には「良い動き、良い芽が出てきていることは確かであり、基調的なインフレ率が少し上がってきている」との認識を示した。高水準の賃上げとなっている今年の春闘について「ここまでの動きは喜ばしい結果、動きになっている」とし、こうした動きが持続すれば「より高い基調的なインフレ率、2%の安定的・持続的なインフレの達成につながる可能性は十分ある」との見解を示した。

市場の状況注視

欧米の金融不安に関しては、現時点で日本経済に大きな影響を与えるとはみていないと説明。各国当局の迅速な対応によって市場は落ち着きを取り戻しつつあるとする一方で、「市場における不透明感、不安感が完全に払拭(ふっしょく)された状態ではない」とし、今後の状況を注視すると述べた。

植田氏は会見の冒頭で、「日銀の使命である物価の安定と金融システムの安定の実現に向け、力を尽くしてまいりたい」と語った。長年金融政策を研究対象にし、審議委員として政策運営や中央銀行実務にも関わってきた経験を生かして、「物価の安定の達成というミッションの総仕上げに向けて、議論・実務の両面で尽力してまいりたい」と意欲を示した。

金融庁長官を務めた氷見野氏は、日本の金融システムの現状について、全体として安定しており、ショックに対する一定の頑健性も有していると評価した。一方、米欧の金融不安に関して海外では隠れていたぜい弱性が思いがけない形で表に出る事例が続いたとし、「金融機関との対話やモニタリングに努めるとともに、海外当局との連携にも努めていきたい」と語った。

長く日銀の金融政策の企画・立案に携わってきた内田氏は、金融政策運営について「大事なことは、正確な情勢判断を行い、それに応じて慎重にタイミングを選びながら、的確な政策を行っていくことだ」と指摘。5年間の任期において「2%の物価安定の目標を実現したい」とし、「金融市場で不連続な変化が生じることがないよう、常に市場の安定ということを意識していきたい」との考えを示した。

就任会見に先立ち、植田総裁は岸田文雄首相と官邸で初めて会談した後、政府と日銀の2013年の共同声明について「考え方は適切であって、直ちに見直す必要はないという点で一致した」と記者団に語った。また、「日銀と政府が不確実性が高い現在の情勢の中で、意思疎通を密にして機動的な政策運営を行っていく」ことを確認したという。

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